地球の大気が宇宙空間と接する境界領域では,太陽放射により大気の一部が電離した電離圏が形成されています.私たちが利用しているGNSSの電波は,人工衛星から送信された後,電離圏を通り,地上で受信されます.このため,GNSSの電波は電離圏の影響を受け,GNSS測位に誤差が生じます.しかし,逆に,GNSS測位への影響から電離圏における全電子数(電子密度を電波の伝搬経路に沿って積分した量)を求めることができ,電離圏の研究に用いることができます.
電離圏は,太陽放射や,太陽表面の爆発現象の影響を受けて大きく変動しますが,地球大気の影響も少なくありません(図1).私たちは, 国内に設置された超高密度GNSS受信機網の観測データを活用し, 高分解能三次元電離圏トモグラフィー手法を開発しました. これにより, 従来よりも高い空間・時間分解能で電離圏電子密度変動の三次元構造を高精度に再現することに成功しました. この手法を用いることで, 電離圏中を伝搬する波状構造の生成・発達過程を詳細に解析することが可能となりました. 例えば, 2024年能登半島地震の発生後には, 地震に伴って発生した音波が上空へ伝搬し, 電離圏に到達して電子密度変動を引き起こしている明確な証拠を捉えました(図2). また, 2024年5月に発生した巨大磁気嵐時には, 赤道域で発生した電離圏擾乱であるプラズマバブル(電子密度の局所的な減少構造)が日本まで到達していることを示し, その三次元構造を可視化しました.
さらに, 高度約100 km付近に突発的に出現する高電子密度の薄い層であるスポラディックE(Es)層についても, 微細かつ複雑な水平構造を高分解能で捉え, その発生から減衰に至るまでの時間発展過程を明らかにしました(図3).
これらの研究成果は, 地球と宇宙環境のつながりに関する理解を深めるとともに, 衛星通信や測位への影響をもたらす電離圏現象の理解と予測の高度化に貢献すると期待されます.



文献:
Fu, W., Otsuka, Y. and Ssessanga, N., High-resolution 3-D imaging of electron density perturbations using ultra-dense GNSS observation networks in Japan: an example of medium-scale traveling ionospheric disturbances. Earth Planets Space 76, 102, https://doi.org/10.1186/s40623-024-02051-2, 2024.
Fu, W., Otsuka, Y., Ssessanga, N., Shinbori, A., Sori, T., Nishioka, M., and Perwitasari, S., Unveiling the vertical ionospheric responses following the 2024 Noto Peninsula Earthquake with an ultra-dense GNSS network. Earth Planets Space 77, 77, https://doi.org/10.1186/s40623-025-02211-y, 2025.
Fu, W., Otsuka, Y., Hocke, K., Ma, G., Nishioka, M., and Jin, H., Identifying medium-scale traveling ionospheric disturbances driven by atmospheric gravity waves over Japan at sunrise and sunset terminators using high-resolution 3-D GNSS tomography. GPS Solut 29, 119, https://doi.org/10.1007/s10291-025-01875-z, 2025.
Saito, S., Yoshihara, T. and Hosokawa, K., Study of fine spatial structures of the daytime sporadic E layer and its temporal evolution by using an ultra-dense GNSS receiver network. Earth Planets Space 77, 199, https://doi.org/10.1186/s40623-025-02332-4, 2025.