全地球測位システム (Global Navigation Satellite System, GNSS) は、現代における位置情報サービスの基盤として重要な役割を果たしています。一方、GNSSは地球科学の幅広い分野においても、欠かせない重要な観測センサーとして位置付けられています。

日本においては、国土地理院が運用する電子基準点(GEONET)が国家の基盤としてのGNSS観測網として多くの地球科学的な成果を挙げてきました。しかし、世界中でも最も稠密な観測網の1つである日本のGEONET (1,300カ所超) においてさえも、その観測点間隔(約20km)に規定され、より細かい空間解像度での現象、例えば内陸の活断層におけるひずみの蓄積・解放過程や、水蒸気の空間的な分布などの情報を正確に把握する上で限界がありました。

このような中、ソフトバンク株式会社が位置情報サービスの高度化のために全国3,300カ所以上というこれまでにない独自基準点網(GNSS観測網)を展開し、2019年11月よりそれらデータを用いたサービスを提供しています。

東北大学大学院理学研究科は、2021年6月からソフトバンクの独自基準点におけるGNSS観測データの提供を受け、地殻変動場の把握のための精度検証を実施してきました。その結果、ソフトバンクの独自基準点から得られるデータは、高い精度で地殻変動を把握することが可能であり、国土地理院の電子基準点を補完する重要なインフラとして、防災・減災に大きく貢献し得ることを明らかにしてきました。

これらの成果を受け、東北大学大学院理学研究科は、これらデータを幅広い地球科学分野での研究・開発に活用するために、ソフトバンク株式会社およびALES株式会社の協力のもと、「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」を2022年8月に設立しました。

同コンソーシアムでは、ソフトバンクの独自基準点データの地球科学分野での利活用を進め、同独自基準点の活用方法を検証します。また、幅広い分野の地球科学の研究者が連携することで、新しい地球科学の創成を目指したいと考えています。皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム 代表
東北大学大学院理学研究科 准教授 太田雄策