日本列島では,国土地理院によって整備された全国約1,300カ所のGNSS観測網GEONET(電子基準点)によって,日々の地殻変動が高精度にモニタリングされています.

GEONETの空間密度は世界的に見ても高密度ですが,日本列島周辺では様々な地域で大小の地震が発生し,特に震源の浅い地殻内で発生する地震や断層運動に伴う地殻変動は,変動域の範囲が限られるため地殻変動の全体像を把握することが困難でした.

全国約3,300カ所に設置されたソフトバンク独自基準点のデータを用いてGEONETのデータを補間・補強することにより,より詳細な地殻変動分布が把握できるため,特に変動源が浅い地殻活動現象に対して,その変動メカニズムが明らかになることが期待されています.

実際,2020年12月以降の石川県能登半島北東部や2020-2021年にかけて北海道東部屈斜路カルデラ付近では,それまでと傾向の異なる地殻変動(非定常地殻変動)が観測され,ソフトバンク独自基準点のデータと国土地理院,大学等のデータの統合解析(図1,図2)により,変動源や地震の発生メカニズムの解明に役立てられています.

地震図1
図1 能登半島北東部の群発地震に伴う非定常地殻変動(2020年12月-2023年3月)(Nishimura et al., 2023を改変)
地震図2
図2 北海道東部における非定常地殻変動(2021年9月-2022年9月,水平成分)(大園・他,JpGU2023)