日本列島は111(全世界の活火山の約7 %)の活火山を有する世界有数の火山国です.火山は良い風景・温泉・肥沃な土壌など人間生活に有益なものを数多くもたらすと同時に,噴火などにより災害をもたらす存在でもあります.そのため,火山活動を常時把握しておくことは災害を軽減し我々の生命や財産を守るために重要です.

活火山では火山活動にともない地下でマグマや熱水が移動し,それにともない山体が変形します.そのような変形は地表でも観測されます.つまり,このような変形を観測することは地下でのマグマや熱水の位置や動きを明らかにすることにつながり,進行中の火山活動の実体を理解することにつながると同時に,将来の火山活動や噴火のより精度良い予測にもつながります.

火山活動はさまざまな時間スケールで発生します.たとえば,イタリアのカンピフレグレイ(Campi Flegrei)では数10年にわたって山体の隆起が継続していますが噴火には至っていません.また,2011年と2018年に噴火した霧島新燃岳では噴火に先行した山体膨張が1年ほど継続しました.さらに,多くの火山では,噴火直前の数日や数時間といった時間スケールで顕著な山体変形が発生します.また,噴火が発生して山体が収縮したあとの変形も,変形が止まる例,収縮が継続する例,すぐに再膨張が始まる例,など様々です.そのため,火山活動の理解のためには細かい時間分解能での観測を連続的に行うことが重要です.

また,ほとんどの火山では火口から数kmから10 km以内という比較的小さなスケールで地表の変形が観測されます.とりわけ,噴火直前には火口から数100 mや数 kmといったスケールで山体が変形します.そのため,火山活動の把握や予測のためには,時間分解能の優れた観測を行う必要があると同時に空間的に密な観測を行う必要もあります.

ソフトバンクによる独自基準点網(独自GNSS観測網)は,優れた時間分解能による観測・空間的に密な観測の2つの両方を高いレベルで実現する観測網です.この観測網を用いることによって火山活動のより詳細な把握やより精度の高い活動予測が実現するものと期待しています.