現在,地球の上空には,合成開口レーダ(SAR)と呼ばれる高分解能のレーダを搭載した地球観測衛星がいくつも周回しており,昼夜や天気を問わず観測をしています.

干渉SAR(InSAR)と呼ばれる解析手法を用いると,別の時期に撮像されたSAR画像から,レーダの電磁波がアンテナまで戻ってくるまでのわずかな時間の変化を利用することにより,二回の撮像日の間に生じた地面の変動を抽出することができます.このInSARの利用により,地震,火山噴火,地盤沈下,地すべり,氷河の流動などによる変動が詳細に捉えられ,今では地球科学研究や建造物のモニタリング等に欠かせない解析技術となっています.

InSARの主要なノイズ源は,大気中の電波遅延です.これまで,気象データに基づく方法など,いくつかの補正方法が開発され利用されてきていますが(図1),地面の動きをより詳細に捉えるためには,より高度な手法が必要です.CSESSのGNSS観測データを使うと,大気中の伝播遅延量(補正量)を高分解能で推定することができ,大幅にノイズを軽減できることが期待されます.

SAR図1
図1 InSARのデータに見られる大気中の電波遅延とその補正.