2024年3月22日
ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム
ソフトバンク株式会社
ALES株式会社
東北大学大学院理学研究科
京都大学防災研究所

ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)、ソフトバンクの子会社で位置補正情報の生成・配信事業を手がけるALES株式会社(以下「ALES」)、東北大学大学院理学研究科、京都大学防災研究所、およびソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム(以下「本コンソーシアム」)※1は、令和6年能登半島地震に関する地殻変動の調査分析を継続して実施しています。また、政府の地震調査研究推進本部 地震調査委員会や地震予知連絡会、国内外の関連学会に分析した内容を報告するなど、さまざまな研究・調査活動に協力しています。※2

本コンソーシアムは、ソフトバンクが全国3,300カ所以上に設置している高密度なGNSS※3観測網(以下「ソフトバンク独自基準点」)のうち、能登半島エリアのデータを活用して統合解析することで、令和6年能登半島地震による水平変動や上下変動の地震時変位量と、それに基づく断層面上でのすべり分布などを推定しました。また、2020年から継続している能登半島での地震活動に伴う隆起などの地殻変動に関する詳細の分布も解析しました。これらの成果は、政府の地震調査委員会などで報告され※4、令和6年能登半島地震の発生後および発生前から継続している地震活動の評価などに活用されています。

このような地震の評価には従来、国土地理院のGEONETや、大学などの研究機関が設置するGNSS観測点が主に活用されていました。今回これらの観測点に加えて、ソフトバンク独自基準点で取得したデータも合わせることで地殻変動を具体的にデータで示して、より詳細に地震の描像を得られたことは、ソフトバンク独自基準点のデータが持つ空間的な稠密性(ちゅうみつせい)の高さや有用性を示すものです。

ソフトバンクとALESは、今後も本コンソーシアムの活動を通して、地震だけでなく、地球科学に関するその他の分野(火山、気象、電離圏など)の研究活動にも協力します。さまざまな現象の理解が進むことで、自然災害の高精度な予測を可能にするなど、防災・減災に貢献することを目指していきます。

※1 本コンソーシアムには、国内の21研究機関28部局と民間企業3社が参画しています。詳細はこちら(https://csess.jp/)をご覧ください。

※2 本コンソーシアムの成果の一覧は、こちら(https://csess.jp/research_results/)をご覧ください。

※3 GNSS(Global Navigation Satellite System)とは、米国のGPSなど、上空を周回する人工衛星から送信される電波を利用して、受信点の位置を正確に把握する衛星測位システムの総称です。日本政府は国産のQZSS(準天頂衛星)「みちびき」の利用を促進しています。地面に固定された受信点であれば、時間間隔をおいて計測することで、その間に生じた地殻変動を3次元的に把握することができます。

※4 地震本部地震調査委員会の評価資料は、こちら(https://www.jishin.go.jp/evaluation/seismicity_monthly/)をご覧ください。

  • 石川県能登地方の地震活動の評価(令和4年7月11日公表)
  • 石川県能登地方の地震活動の評価(令和5年6月9日公表)
  • 令和6年能登半島地震の評価(令和6年1月15日公表)
  • 令和6年能登半島地震の評価(令和6年2月9日公表)

■地殻変動の解析から得られたデータ成果(抜粋)

  • 2020年12月ごろに始まった能登半島北東部の地殻変動と群発地震は、地下深部からの流体の上昇とそれに誘発された非地震性すべりが原因であり、これらが応力の蓄積されていた能登半島北岸の活断層のすべりを促進したことによって、令和6年能登半島地震(マグニチュード7.6)が発生したと考えられます。
  • GNSSを活用した統合解析の結果、令和6年能登半島地震により、能登半島北部の最も変化が見られた箇所で、2mを超える西向きの水平変動と、1.9mを超える隆起を示す地殻変動があったことが明らかになりました。
  • 統合解析で得られた水平変動・上下変動の変位場から、原因となる断層すべり分布を推定したところ、能登半島の東西に位置する箇所に二つの大きなすべりの領域が存在していたことが明らかになりました。
    ※ 暫定的な解析結果です。今後変更になる可能性があります。
  • 令和6年能登半島地震の発生後、地殻変動は減速しながら継続しています。地殻変動の空間分布は、地震発生時と地震発生後で似ている一方で、能登半島北部の全域が地震後1カ月間で最大5cm沈降しているなどの異なる特徴もあります。
  • 能登半島で発生した地震活動のように、深さが20kmより浅い変動源による地殻変動は、変動源周辺に局在化するため、変動源のそばで観測する必要があります。そのため、ソフトバンク独自基準点などの稠密な観測網のデータを統合したGNSS解析は、浅い変動源による地殻変動のモニタリングに対して特に有効であることが判明しました。

■本コンソーシアムの活動(特に令和6年能登半島地震の評価活動)における各機関の役割

ソフトバンク/ALES

能登半島エリアのソフトバンク独自基準点のうち、約30カ所の観測データをALESがRINEX形式(後処理用のファイル形式)に変換し、令和6年能登半島地震の発生前後を含めた日ごとの30秒間隔のデータを本コンソーシアムに提供しています。

東北大学大学院理学研究科

本コンソーシアムの代表機関として、主にGNSSを活用した統合解析による断層すべり分布の解析を実施しています。

京都大学防災研究所

本コンソーシアムの地震グループの幹事機関として、主にGNSSを活用した統合解析による地震時変位量の解析および断層モデルの推定などを実施しています。

<参考>

・図1

ソフトバンク独自基準点、国土地理院GEONET、京都大学・金沢大学観測点のGNSS統合解析によって得られた、令和6年能登半島地震(マグニチュード7.6)の発生時と発生後の地殻変動。赤丸は1月1日に発生した地震の震央(気象庁による情報)を表す。

(左)地震時地殻変動。2023年12月22~31日と2024年1月22~31日(1点のみ2月9~18日)の差を地震時変動とした。

(右)対数関数フィッティングによって得られた地震後32日間の地殻変動。

・図2

(左)推定された地震時すべり分布と水平変位場の比較。黒矢印が観測値、白矢印がモデルから期待される変位を示す。

(右)推定された地震時すべり分布と上下変位場の比較。


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